社長・部長エッセイ

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【部長シリーズ第17回】地域産業開発部長:開発コンサルタントの醍醐味とは

2022年09月

最近うれしいことがありました。私が2003年から関わっているヨルダンの古都サルトの観光事業関係者から2つの連絡があったのです。

一つは技プロで雇用したプロジェクトスタッフから。彼女はプロジェクト対象の博物館スタッフとして雇用し、街歩きトレイルの開発や住民ガイドの育成に貢献してくれました。事業の持続性確保のために、なんとか実施機関である観光省の職員にしてくれと、公務員の新規雇用は停止中と渋る観光省に何度もかけあい、事業終了後に雇用が実現しました。その彼女が「昇進した」という連絡です。もう一つは、その彼女からサルトへの観光客が2022年1-6月で5万人(8,300人/月)を超えたという連絡でした。観光客数は技プロ終了時が月当たり300名だったことを考えると驚くべき増加です。もらったデータによれば2018年以降は、コロナ禍で厳格な外出制限があった2019年を除いて、年間2万人(1,700人/月)と観光客は順調に増えていたようですが、昨年7月の世界遺産登録とコロナの制限緩和の影響でさらに観光客が増えているのです。

思えば2003年に初めてサルトを訪問した際は、現在観光の中心となっている博物館の修復工事のためのテナントの立ち退きでもめている真っ最中でした。観光客は誰もいませんでした。その後、2008年に町全体を博物館ととらえるエコミュージアムのコンセプトで観光開発を進めようと、萩市や大学関係者とともに調査を行った際には、観光省とサルト市がもめており、調査団はサルトに足を踏み入れることすらできませんでした。

2012年に技プロが始まった際は、住民や商業関係者から「いつ観光客が来るのか」と詰め寄られました。その時点でも、サルトにはバックパッカーの若者が来るくらいで、ほとんど観光客はいませんでした。世界遺産の可能性については、サルトに関わり始めた2003年のころから言われていましたが、その日が来るとは私を含めて、誰も信じていなかったと思います。

私はサルトにそこまでの思い入れがあったわけではなく、観光開発が専門でもなかったのですが、目の前の課題をなんとかしなければと動いているうちに、縁が縁をよび、国際協力銀行専門調査員、個人コンサルタント、KMC社員と立場が変わっても、20年近くサルトに関わらせていただくことができました。幸運だったと思います。やっていたことは目の前の課題を解決するために人の話を一生懸命聞き、できることはやる、できないことはできそうな人を連れてきてやってもらう。その繰り返しでした。しかし、多くの関わった方が同じ目的を共有して少しずつ努力した結果、20年たつと世界遺産が実現していました。しかも、2017年のフォローアップ支援以降、日本政府の介入はなく、世界遺産登録やサルト市への観光客増加は私たちのカウンターパートであったヨルダンの人たち自身の手で達成されました。

国際開発の仕事をしていると解決しようとする課題があまりにも大きく、自分が何をやっても役立っていないのではないかという思いにとらわれることがあります。でもその時は、役立っているかどうかわからなくても、サルトの例のように何年かたつと大化けしていることがあります。なので、カウンターパートや受益者と一緒に、目の前の課題ひとつひとつに、あきらめずに取り組む姿勢がとても大切だと思います。そしてそういう現地の人々との交流こそが、この仕事の醍醐味でもあるように思います。サルトについてももちろん世界遺産登録はうれしいですが、私にとってはそれまでのプロセスが宝物です。役に立っているかどうかわからなくても、一緒に頑張っていた日々があったからこその成果だと思うからです。

これは技プロに限らず、調査案件であっても、どんな小さな案件であっても変わりません。国籍や育ってきた背景が全く異なる現地の人々と、同じ目的を共有して一緒に努力するから得られる成果や喜びがあると考えます。 開発コンサルタントという仕事は、そういう得難い機会をたくさん与えてくれる仕事だと思います。

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