X+Yの公式
自分がプロとしての仕事をしてきちんと成果を出すためにはどうすべきか、ということは日々の課題ですが、その他に、どうしたらこの業界の売れっ子になれるのか、ということを時々考えます。売れっ子といってもなにも芸能人ではないので、私たちの場合は、業界の中で競争しても仕事が取れる、手がけた仕事は称賛される、そんな存在ということです。別に毎日青くなって仕事をしているわけではありませんが、実際には、競争しつつ仕事を取り続ける、仕事が取れなければ食べていけない、家族を養っていけない、という厳しい現実の中に私たちはいます。そんな意味で、違った業界でも売れっ子でいる人たちの言葉は参考になります。最近は島田紳助という人間に少し興味を持って、彼の書いた本を何冊か読んでみました。自ら、人生で大成功をおさめた、これはまぐれではないと、何とも自信たっぷりなんですね。と同時に、これまで相当考え、相当努力をしてきた、だから今の自分があると書いています(ちなみに彼、いくつかの店のオーナーでもあって、その一つが近くの天現寺橋のたもとで人気のお好み屋さんだそうです)。
彼の書いた「自己プロデュース力」という本の中に、「X+Y」でものを考えろ、とありました。「X」は自分の能力、「Y」は世の中の流れ。「X」は他人に聞いても仕方がない、自分にしか分からないこと。だから必死に自分自身を見つめることが大切。「Y」は周りをよく見たり資料を研究していれば分かること。特にこれから世の中や業界では何が起きるのか、どう変わっていくのかを知ることが重要。この「X」と「Y」が分かった時に、そこでようやくどうやったら自分は売れっ子になれるのかを考える。うまくXとYがぶつかった時にこそ売れるようになる。それが分からないままに悩んでも、それは無駄な努力、といったことが書かれていました。なかなか言い得て妙、と感じました。
私たちにとっては、およそ「コンサルティング能力」というのがまさに「X」ですね。自分の「X」は何か、自分にしか分からない能力やポテンシャルを自分で理解しておくということ。ここをどんどん磨かなくてはならない。少なくともどんなコンサルティング能力が自分に備わっているのか、備わりそうなのか、イメージは自分にしかわからない、だから皆さんには、何をしたいのか、すべきなのか、自分で考えて、自分で行動して、と常々言っています。もし万一、具体的にイメージがわかないとすれば、残念ながらコンサルタント業には向いていないということです。
ただ「コンサルティング能力」といっても、専門分野も多岐にわたれば、途上国の現場に入ってからの仕事のやり方、進め方も人によって大きく違います。「X」の大きさ、つまり能力の高さですが、これは例えば文章力が優れているとか、プレゼンがうまいとか、何かの技術力が秀でているとか、そんなことも当然あるのですが、それ以上に重要なことは、そうした小さな能力の積み重ねで周囲を説得できるかどうか、コンサルタントとしてはここで判断される、ということだろうと思っています。総合力、あるいは何か一つでもはるかに秀でた技術力を持っているかどうか、ということでしょう。
国際協力という分野においては、あまりに多くの問題が山積しているので、多くの能力が必要とされていると思います。とても一人だけの力でどうなるものでもない。だからチームワーク。だから会社。チームが自分たちの「X」を理解し、それを他のチームメンバーにも分かってもらい、足りないところを補い合い、あるいは伸ばしあっていく。こうなるとこの「X」はチーム力、総合的なコンサルティング能力ということにもなりますね。KMCにとってのこれからの大きな課題の一つは、この「X」をいかに大きくしていくかということだろうと思っています。
さて「Y」の方。これはどうしても今の私には、国際協力におけるODAの限界を感じて仕方がない。ODAという公共事業が果たしてどこまでできるのか、どこまで期待して良いのかが見えない。少し前まではハードからソフトへの流れがありました。これまでハード中心にモノづくりをやってきたけれど、それがあまり使われていないじゃないか、だからもっとキャパシティビルディングや仕組みづくりといったソフトを充実させなければならない、というのが全世界的な流れでした。これが少し前の「Y」。だから今、KMCのようなソフト系コンサルタント企業がやっていけているわけです。
これからは、ODAの予算不足に端を発した官民連携の流れ。先進国にもお金があるわけではなく、特に日本に至ってはODA予算の削減はまだまだ続くと思います。残念ですが、国の惨憺たる状況を考えると、ODAどころじゃないと思う人が増えることは仕方がない。だから官民連携、おそらくこの「Y」はしばらく続くだろうというのが私の読みです。でもこれってやはり官が中心です。今の官が官でいる限りおそらくダメでしょう。なぜなら、関係者をまとめて引っ張っていく、それだけの力が彼らにはないし、そんな気概も問題意識もない。そして民の力を上手に使うことができていない。どうしても役人意識から抜け出せない。だから、もっと民間が主になれるようなことを考えないとならないだろうと思っています。といって民にだけ任せていても、じゃあ何をどうすれば、というのが見えてこない。まだまだこれからの「Y」を見つけるための研究が必要だということだと思っています。試行錯誤、ですね。それもこれからのKMCの大きな課題ということです。
KMCのXとYが今ぶつかり合った!と感じることができる日が来るように考え、努力していきましょう。皆さんからもぜひお知恵を拝借したく。