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自動車整備業における外国人社員の育成・戦力化 ~キャリアパス・評価制度のあり方の提言~

2026年09月18日
国内
人材育成自動車整備業外国人材

1.少子高齢化による労働力不足と自動車整備業

 少子高齢化による労働力不足が深刻さを増している。厚生労働省の令和7年版労働経済白書では、2020年の生産年齢人口(15~64歳人口)が約7,500万人であったのに対し、20年後の2040年は約6,200万人と、約1,300万人(17%)も減少する見通しであり、長期的な人手不足が続く。

 その中でも自動車整備業は、少子高齢化だけではなく若者の自動車整備業離れを背景として、深刻な人材不足に陥っている業種の一つである。令和8年度の国土交通省予算資料では、自動車整備士の有効求人倍率が5.09倍とされている。これは全業種平均の1.25倍を大きく上回っており、自動車整備業における人材不足はより深刻だ。

 この状況が続けば、整備工場の自動車整備士不足だけでなく、それによる車検・点検・修理体制や自動車の安全確保にも影響する。

 人材確保に向け、自動車整備業では以前から外国人の受入れを実施しているが、言語、文化、価値観の違い、将来への不安などから外国人社員が職場に十分順応できなかったり、日本人社員が外国人社員とのコミュニケーションや指導を負担に感じたりするなどのケースも少なくない。さらに、2027年4月1日から技能実習制度に代わって導入される「育成就労制度」では転職の条件が緩和されるため、外国人社員がより良い条件の会社、将来の成長により期待が持てる会社に転職する恐れもある。

 外国人を受け入れる会社は、外国人社員が能力を向上させ、会社に定着してもらうために、彼らが意欲を持って働ける環境を整えるべきである。そのためには、日本人社員の協力を積極的に得ながら外国人社員を育成するとともに、日本人と外国人が共生し、イキイキと活躍できる職場を作り上げる必要がある。

 そのためには、国籍にかかわらず、役割、成果に応じて職位が上がっていけるキャリアパスと、それを補完する公平な評価制度の整備が求められる。以下では、その実現に向けたキャリアパスと評価制度のあり方を提言する。

2.キャリアパスのあり方

 日本人・外国人社員を原則として同一の職位体系に位置づけ、国籍にかかわらず、担う役割と成果の達成度に基づいて昇格できるキャリアパスの構築を提言する。これによって人事評価を受ける側にとっての公平性と納得性を高めることができる。

 具体的には、「ジュニア整備士」「整備士」「シニア整備士」「リーダー」「工場長」などの職位を設定し、それぞれの職位に求められる役割・成果等を明確化する。そのうえで、各職位の昇格条件を満たした社員が、国籍にかかわらず次の職位へ昇格できる仕組みである。

 各職位の役割は以下の通りである。各職位において想定される外国人社員の在留資格を括弧書きで示した。

3.コミュニケーションに関する役割と評価

 上表では、現業職であるジュニア整備士、整備士、シニア整備士のコミュニケーションに関する役割において、日本人社員と外国人社員で役割を分けた。コミュニケーションに関する役割は、外国人社員の定着を促進するうえで特に重要であることから、当該役割を評価項目として明確に位置づけるとともに、評価におけるウェイトを高めることが望ましい。

 外国人社員を採用する場合、日本語の理解が十分でなかったり、日本とは違った文化・価値観をもっていたりすることも多い。これまで日本人社員に対して行ってきた指示・指導方法ではなく、外国人社員が理解しやすいよう、簡潔かつ明確な指示・指導を行う必要がある。ポケトークなどのツールを使うのも一案である。そのためには、具体的な指示・指導方法を整備するとともに、外国人社員を受け入れる前から、会社として必要な作業手順書や整備用語の統一、研修体制等をあらかじめ整えておくことが重要である。以下は、その具体的な例である。

*「自動車整備の日本語」「イラスト集」をはじめ「自動車安全衛生教材(多言語対応)」など、現場で即使える諸教材が以下のサイトから入手できる。https://www.jica.go.jp/activities/issues/transport/mechanic/health_safety_text/index.html

4.評価制度

 外国人社員に明確な将来像を示すキャリアパスを整備するとともに、各職位に求められる役割を明確に設定することが重要である。特に、外国人社員の定着・育成を促進するためには、リーダーや工場長のコミュニケーションに関する役割を明確に位置づけ、その達成度を評価するとともに、評価結果を報酬に反映させる仕組みを構築することが望ましい。

 こうした役割を評価項目として明確に設定することで、リーダーや工場長が外国人社員の育成や職場のコミュニケーションを促す動機付けが生まれる。さらに、評価結果に応じて報酬が変動する仕組みとすることで、外国人社員の育成・戦力化に向けた行動を組織として促進することが期待できる。

 具体的には、現業職においては、職位が上がるにつれて、コミュニケーションや指示・指導に関する評価のウェイトを段階的に高める(下図)。すなわち、上位職位になるほど、外国人社員とのコミュニケーションや指示・指導に対する責任をより重く評価し、その達成度を報酬 にもより強く反映させる仕組みとする。

 一方、管理職においては、職位が上がるにつれて、求められる役割を「コミュニケーションの促進」から「コミュニケーション上の課題の解決」へ、さらに「相互理解と協力関係の構築」へと段階的に高める。上位職位ほど当該役割に対する評価のウェイトを高め、その評価結果を報酬により強く反映し、職位に応じた責任と行動を促す仕組みとする。

5.おわりに

 外国人社員の定着は、人材不足の解消にとどまらず、企業の持続的な生産性向上にも寄与する可能性がある。そのためには、日本人、外国人社員に共通するキャリアパスを整備するとともに、公平性・透明性の高い評価制度を構築し、外国人社員が将来のキャリアを見据え、意欲を持って働ける環境を整えることが重要である。また、キャリアパスや評価制度を明確にすることは、外国人社員が自身の成長や会社への貢献を実感し、自ら学び、より高度な整備技能の習得や、管理職への挑戦を目指そうとする内発的な動機づけにもつながる。これについては別の機会に改めてご説明したい。

 その前提として、社長や工場長が外国人社員の育成・戦力化を会社の重要な経営方針として明確に示し、社内に浸透させるべきであることはいうまでもない。シニア整備士やリーダー任せにせず社長や工場長が率先して外国人社員とコミュニケーションすることも重要である。外国人社員には日本の職場の文化やルールを一方的に押し付けず、彼らの文化や考え方も理解したうえで、安全や品質確保のためのルール厳守の重要性を理解してもらうこと、日本人社員には、外国人社員の活躍と定着は会社にとって必須かつ有益であり、日本人社員のワークライフバランス向上にもつながることを理解してもらうよう、積極的に働きかけていくことが重要である。

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