社長・部長エッセイ

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「現実」を見てますか?

2008年11月
コンサルタントでありながら、つまり現実を変革させていくことを大きな使命とする稼業に就きながら、時々、果たして我々はその「現実」をきちんと理解し得ているのだろうかと感じることがあります。 私たちコンサルタントが業務に携わる際、「現実を理解し」、「問題を分析し」、「解決策を提示し」、そして「実行する」あるいは「(周囲を巻き込んで)実行支援する」という一連の手順、あるいはその一部の手順を踏むことがほとんどです。皆さんご承知のように、プロとして、こうした一つ一つのプロセスそれぞれに必要なスキルや取り組み方があります。それらを駆使してこのプロセスをすべてきちんとこなすことができれば、そして結果として期待される成果をあげることができれば、コンサルタントとしては一流と言えるだろうと私は考えています。 ただ、言うは易し実際には簡単ではない。その大きな理由の一つは、我々コンサルタントといえども、実際にはなかなか「現実を理解する」ことができていないから、ではないでしょうか。コンサルタントである私自身がこんなことを書いてしまっては不謹慎なのかもしれませんが、でも仕方がない。そもそも人間は普段「現実を見て理解している」と思っていても、実は「現実を自分なりに解釈してそれを現実だと思っている」ようです。実際に、同じ事象や人々に接しても、意見が分かれることは良くありますよね。良く言われることですが、例えば、半分水が入っているコップを見て、「まだ半分ある」とするか「もう半分しかない」とするか、人によって感じ方がまったく違う。映画を見たって、解釈の仕方は人それぞれ、驚くほど千差万別です。いわんや途上国の状況を見て、いったい何が現実なのか、どんな現実の故に彼らは貧困から抜け出せないのか、我々の間で彼らの「現実」についてとても大きな違いがある。 これは、人間だれしもが持っている、いわゆる「バイアス」のために起こることです(このあたりロバートチャンバース的ですが)。これは避けることが出来ない、だから仕方がない。私たちはどうしても私たち個々に特有の見方をしていて、それで考え方や感情が生まれる。それをベースに現実を解釈しているのに、さも「現実を見ている」と誤解している。つまり、実は結局、我々は「現実を見る」なんてことはできない、感覚的、感情的な動物だと考えておいた方が良いのだと思います。その方がすっきりします。 それならばどうするか、他の人の現実認識と自分のそれとを照らし合わせ、お互いにかみ合っているのか、常にチェック作業を続けることしかないのではないでしょうか。それ故、チームで仕事をする時には「コミュニケーション」がとても重要になってきます。コミュニケーションの活発ではない職場やプロジェクトが良い成果を生み出すことはまずあり得ない。それは、すり合わせができていないから。つまり、すべての行動のベースとなる現実認識が、一人の現実(と勝手に思っている)と他の人の現実が違っていて修正されない、メンバーがバラバラに動いていてチームとしての行動になっていない、ということなのだと思います。 それもあって、私が調査にあたる際には常に「現況」と「問題点」とを意識して分けてとらえるよう自分自身に言い聞かせていますし、他の社員やチームメンバーにもそのようにお願いをしています。私たちの業務の中で「現況」とは誰にとっても全く同じ解釈ができる「事実」でなければならず、それを超えて少しでも人の解釈が入る場合、それは事実ではなくなります。まず事実は何かを理解する、それを出発点として色々な解釈をしてみる、それをチームで侃々諤々議論する、これができれば少なくとも一人でする仕事、つまり偏ったバイアスだらけの仕事よりはるかに高い成果を生み出せる可能性が高くなるのだろうと考えています。だからコミュニケーションが活発な現場や職場は知的で面白い。自分が気がつかない多くの点を知ることができるからです。 私を含め皆さんも、自分は実はバイアスの塊の人間であること、感情的な人間であることを十分に意識しながら、周囲のメンバーとコミュニケーション図りながら軌道修正していくことを心がけていきましょう。 さて、そんなこと考えていると、今度は他人から自分はどう見られているのか、気になってきませんか?自分はそんなつもりでなくても、他人はその人が持つバイアスばりばりの眼で自分を見て「こんな人間なんだ」と判断しているわけです。誤解がないわけがないですよね。それならどうすれば?、少なくとも、自分自身の見てくれも心の中も、「こうだ」と考える自分の姿を見せようと意識することだと思います。自分が人に見せたい、人に自分はこうだと理解してもらいたい自分自身の姿をイメージして、外見もそれに合わせる、つまり身も心もいつもちょっとオシャレしてみる、そんな意識を大切にしていきたいですね。
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