社長・部長エッセイ

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今、日本人として考えること

2009年02月
世界中が、今、大恐慌以来といわれる経済危機に陥りつつあり、米国ではオバマ大統領が就任、というとてもエポックメーキングな時を経験している、というよりも嵐の中にいます。良くも悪くも滅多にない歴史的な瞬間ではないかと思います。そしてこの二つの出来事がこれからの世界のあり方や私たちの生き方に与える影響はとても大きいのではと感じています。 オバマ大統領の就任演説、いろいろな意見はあるようですが、私自身は素晴らしいと感じました。"今、自分たちは大変な危機を迎え、多くの人が自信を失いつつある。しかし、自分たちが繁栄と自由のためこれまで成し遂げてきたことを思い出し、誇りを持ち続けよう。今の試練はこれまでとは違う難しさがある。それを自覚し、一人一人の責任感と信念、決意で乗り越えよう"そんなメッセージでした。 1月28日付日経新聞の社説では、「アメリカは新たなチャレンジに対して、官民のベクトルが合ったときとても大きな力を発揮する国だ」と書かれていました。うらやましい、と思いました。最近の日本は、自信を失っているように思えてならないからです。どうしてなんでしょうね、官民とも、自分の国を発展させようとするベクトルより、皆が評論家になって他人事のように周りへの批判を重ね、足を引っ張り合っていると感じています。自分の国なのに、自分自身の責任とか自覚とか行動とか、どこにいってしまったのか。残念ですよね、これだけこの国を発展させてきた物凄い力がありながら。皆が日本人としての誇りを持ち、自らの力を信じて「ますます良い国にしよう」と考え行動すれば、もっともっと素晴らしい国になるに違いないのですが。 これからしばらくの間、おそらく大きな不景気の嵐が吹き荒れようとする今、ますますマイナス思考に陥っていくであろう日本にあって、私たち途上国の開発に携わる日本人は、どう考え振舞っていくべきなのか。 そもそも開発援助の世界でも、日本はずっと自信を失ってきたように思います。税金の無駄遣い、使われない施設、感謝されない援助、援助の名を借りた搾取、官民の癒着、企業の談合、不正….長い間、こんな言葉ばかりが躍っていました。関係者内外からのそうした声を聞き始めてから随分と経ちますが、でも、当事者の一人として、その間日本の援助は大きく変わってきたように私は感じます。まだまだ十分とはいえないとは思いますが、今、日本は自分たちがやっている支援の質にもっと自信を持って良いのではないか、いや自信を取り戻しても良いのではないか、最近強くそう感じています。どうしてポジティブな声が聞こえてこないのか私には不思議に思えます。たいした根拠があると思えない多くの批判や、どうしてもマイナス思考に陥りがちな自らの国民性を振り切って、じっくりと私たちの足跡を振り返れば、日本人としての自信や誇りが湧き上がってくるのを感じます。 日本人としての良さ、これは「相手に対する思いやり」、「相手の立場に立って考えられること」にあるのではないかと感じています。元来持っている技術力の高さ、勤勉さといった特徴もあると思いますが、それよりも、私たちの価値観を押し付けず、相手の価値観や伝統文化を尊重し、できるだけ相手に合わせて行動しようとすること、合わせることができること、そしてお互いに発展していけることに私たち日本人の良さがあるのだと思います。これから世界はますます新しい価値観で動いていくことになると思います。過去の習慣や成功体験を生かせずに苦しいと感じることも多くなるかもしれません。そうした中、無責任な批判に対してはいたずらに浮足立たず、自信と誇りを持ち続けて、日本人ならではの援助を着実に淡々と続けていくことが私たちの使命ではないかと思います。日本人にしかできない援助の仕方、あり方があるのだろうと思います。 相手と一緒になって考え行動し、そして相手に感動を与えること、自らも感動すること、それは相手の価値観を大切に、思いやりを持って接することに他ならない。奢ることなく、しかし自信をもって途上国を支援していくこと、そんな気持ちを大切にしていきましょう。そのために私たち一人一人が自らの責任を自覚し、自分にできることを精一杯果たす、という姿勢で。援助のプロとしてずっとそんな仕事を続けていきたいと思います。
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