社長・部長エッセイ

ソフトエッジ

2016年02月
「マーケティングとは基本的にストーリーテリングだ」と書かれていて、なるほどなあと思いました。「ストーリーテリングとは、商品が画一的にならないようにし、つくったものを意味で包むこと」とあります。『グレートカンパニー』(リッチ・カールガード著、野津智子訳、ダイヤモンド社、2015年)からの引用です。 市場には同じような商品がたくさんある。だから売る側としては、その商品をただ見せるだけはなくて、もっと深いレベルで、つまり人の心に響くような形で伝えることが大事だということです。そして、買う側がその商品を使うたびにそのストーリーに浸り、そのブランドが満足感をもたらせてくれるのだと。 KMCに置き換えてみましょう。「私たち開発コンサルタントは、途上国の開発を支援する、高い専門性を持ったプロフェッショナルの集団です」。これはただの説明文であって、心に響くわけではないですよね。そこでこんな感じでしょうか。「途上国やそこで暮らす人々の生活を少しでも良くしようと、調査をしたり、プロジェクトを実施したり、日夜奮闘している私たち。そこには成功もあれば失敗もあり、喜びもあれば涙もあります。でも、人々の幸せそうな顔がみたくて、今日もまた海外へと出かけていくのです」。まあ表現の上手下手は許容してもらうとして、巷にあふれる説明文とは少し違ってきますよね。 日々淡々と仕事をしがちになりますが、「マーケティング」という観点からは、私たちの日々にもっと意味を持たせるよう意識し、そしてそれを周りにも伝えることが大事なのだろうと思います。それによって周りの方々にも「ああ、KMCってこんな風に仕事をしてくれるんだ。一緒に仕事をするとこんな展開になるんだ」ということが伝われば、それが一つの「KMCブランド」にもなっていくように思います。だからというわけでもないのですが、私たちが掲げている「ミッション」を達成するために、日々苦労していること、楽しかったこと、苦しかったことをもっと本音で、社内で積極的にシェアしあっていこうと思いました。 さて、出だしから脱線してしまいました。この本、組織が成功し続ける条件とは何か、が実に分かりやすく書かれていますし、腑に落ちるのです。大きく3つあると書かれています。それを紹介したい、というのが今回の趣旨です。 まずは「戦略」、市場とか顧客とか競争優位性とか、いわゆる経営の教科書には必ず出てくることで、これはまあ、当たり前のことです。次に「ハードエッジ」、これは仕事のスピードとか、コスト管理とか、資本効率とか。いわゆる数字で表すことができ、端的にいえば利益に直結することです。これも分かりやすく、当然のことだともいえます。ただ、「ハードエッジでたまたま優位性を持てたとしても長続きはしない」と指摘されています。この競争社会、変化が激しいからです。すぐに追いつかれてしまう。だから、確かに必要なことではあるが、「もはや十分ではない」というのです。成功し続ける優れた組織は、ハードエッジのほか「ソフトエッジ」、その両方で卓越しているということです。 ではソフトエッジとは何か。5つあると書かれています。まず、社内外の人との「信頼」。社内外で信頼感を得ることが、気持ちよく仕事をする、つまり良い仕事をする上で最も大切なことだと私も思います。嬉しいことに、私たちがフィードバックとかチームビルディングをやって、割と率直に意見を言い合うことができているのは、こうした信頼感が会社のベースとしてすでにあるからだと思っています。「信頼が社内のあらゆるコミュニケーションの基盤となる。信頼こそがイノベーションを生み、逆に信頼のレベルが低いと税が課せられる。」とあります。まさにそのとおりなんだと思います。だから「信頼」を最も重要なこととしてあげていることに、もろ手を挙げて賛成なのです。 次は「知性」、これはIQの高さではなく、変化に対し続けることができるような「何があってもやり抜く気概であり、勇気であり、意欲である」と書かれています。そうそう、学校で勉強したことは社会で役立たない、とよく言われますよね。環境の変化にうまく追いつけないからです。「気概は吞み込みのスピードアップに直結する」、「根性のある人は、たとえ何が起きようと成功を手に入れる方法を必ず見つけ出す」と。いやいや、本当に素晴らしいことが書かれています。私は頑張る人が好きなんですが、そういうことなんですよね。ともかく何があってもこの人はやり遂げる人なんだ、と思えるかどうか、ということです。私は皆さんによく「腹をくくれ」と言います。面接の時から言っています。「コンサルタントをやりたいのであれば退路を絶て。中途半端な気持ちじゃできない仕事だ」と。逆に腹が括れた人はとても強い知性を持った人だ、ということでもあります。KMCをそんな人たちの集団にしたいのです。 第3は「チームワーク」、これはもういつも言っていることなので、あえて言わずもがなですよね。でも「驚くのは、チームが部分の総和以上の力を、いや実際はるかに素晴らしい力を発揮できるという考えが出てきたのがごく最近である」らしいのです。だから、益々チームワークを重視した組織づくりをしていくことが、益々KMCを先行させることだと思いました。「8人から12人のチームが最も効果を上げている」ということです。その理由は「機動的であり、かつ、他のメンバーを気遣いやすい」のだそうです。フムフム、では今の部のあり方もこれで良いのだ、と思いました。あとは皆さんの心がけ次第、情報の共有とか、サポートのし合いとか、それぞれが部内でしっかり気を遣いあってください。すでに、最も効果が出る、あるいはそれに近いサイズになっている訳ですから。 その次にくるのが、自社独自の「テイスト」。「自社らしさを徹底的に追及する」ということだとあります。私たちも以前「KMCのユニークさって何?」というテーマで合宿やりましたよね。それを経て今のKMCのバリューが生まれたわけです。「本物のテイストは製品と人々とを感情で結びつける」、「テイストには製品やサービスの深いインテリジェンスが表れる。顧客というのは、自分が知性豊かになったことを実感するためなら、多少高くても購入する」そうです。うーん、なんとなくは分かるのですが。このあたり、KMCバージョンに落とし込んでいくために、もう少し探求してみようと思いました。 そして最後が「心に響くストーリー」、これは上に書いたとおりです。ちょっとアメリカっぽくて、わざとらしくて好きになれない人もいるかもしれませんね。でも例えば「(表計算や円グラフの世界で)ストーリーは記憶に残る」のは間違いないことだと思います。少し前に私自身もプレゼンのやり方をストーリーテリング的に変えてみたことがあります。あまり慣れないので自分自身がちょっと戸惑いましたが、やってみると意外にこちらの方が面白いし、聴いている側の方々の反応も違う(ような気がする)。これからは硬いプレゼンスタイルを脱して、こうした「ストーリーテリング的な」プレゼンを取り入れていこう、と思えたほどでした。 こうして書いてみると、ほとんどのことは、なんだか普段私たちが社内でいっていることを上手にまとめてくれた本だという気がします。だから難しくないし、腑に落ちるんです。こうした「ソフトエッジ」を益々大切にしながら、KMCが本当に「成功し続ける企業」になれるよう、これからも皆さん、ますます意識し、努力していきましょう。走っていきましょう。 以上
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