コンサルタントの現地レポート
南アジアのスイス、フンザにて
2016年04月28日
アジア
パキスタンパキスタン国ギルギット・バルティスタン地域高付加価値果樹産品振興プロジェクト
開発協力の現場で、このように美しく、そして現地の人々が素晴らしい場所は貴重です。プロジェクトに入って早々にメンバーが口々につぶやきます。カラコルム山脈の7千メートル級の山々に囲まれた、パキスタン北部のフンザは、南アジアのスイスともいわれるほど山並みが美しいです。そして、毎年4月には、氷河の雪解け水が乾燥した大地に彩りをあたえ、白やピンクの花をつけた木々が、山脈に囲われた谷を覆います。その景色は息をのむほど美しく、そんな地域で育まれた現地の人々もまた、やさしくて温厚です。
フンザを含むギルギット・バルティスタン地域は、年間の降水量が少なく乾燥した気候にありますが、氷河から流れる豊富な水資源により農業を営んでいます。特に、冷涼な気候でよく育つアプリコットやりんごなどの果樹栽培が盛んです。「乾燥しているがミネラル豊富な氷河の水がある」という自然環境が幸いし、病害虫が少なく、また、多量の施肥をしなくとも収穫できるという、いわゆる有機農法が自然と実現しています。りんご園主でもある日本の専門家は、「農薬のお店がまったくない」と目を丸くしました。本プロジェクトでは、これらの果樹産品のポテンシャルを見出し、栽培技術と果樹産品の品質の向上、販売支援を目的としています。
農民にとって果樹は「勝手に育つ」ものです。りんご木の樹高は10メートルを超えていました。整枝・剪定をはじめ、摘果や接ぎ木などの栽培技術を指導しました。しかし、これら栽培技術の成果を確認できるのは年に1回の結実時だけです。しかも樹勢が整うには、数年かかります。すぐに効果が実感できなくとも、農民はまじめに指導されたことを実践します。そこには、農民と専門家の信頼関係がありました。専門家は休みの日でも農家を訪れ、話を聞いています。専門家も農民も辛抱強く教え、教わります。今、その芽が出始めています。
もともと果実を自家用に消費していたところに、品質という概念を教えるのは大変です。木の枝をゆすって落下した果実が製品にされていました。落ちたものや虫や砂が入ったものは製品にしない、ということから始まりました。果実の加工は女性たちの仕事であることが多いです。彼女たちに合わせて、加工方法を工夫します。手を洗うことから始め、現地で手に入りやすい衛生品の使用、省力的に利用できる設備を考えることで、少しずつ品質が高まり始めています。
農民と専門家がともに考え、工夫しています。このプロジェクトの果樹産品には、双方の努力が詰まっています。現地の自然環境と人柄を生かした、現場に寄り添う技術協力を、これからも続けていきます。
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